第2回 顕在化している生産革新活動の能力低下
ここ数年,コンサルティング現場で強く感じている各企業の「生産革新活動」について述べてみたい。
「生産革新活動」とは,生産現場だけではなく設計〜生産管理〜購買〜ビジネス・パートナー(仕入先・外注先等)〜製造〜品質管理〜物流にいたる「モノ造りの改革/改善活動」をさす。私の覚えている範囲では,このことばを使われるようになってから,15年程度が経過する。
しかし,当時の取り組みと比較して次の点において,変わっている。
ERP(企業統合システム)やSCM(サプライチェーン・マネジメント)などIT技術を活用することにより,仕事のやり方が変わってきた。
3DCAD(3次元CAD)やシュミレーションソフトなどの設計の自動化により,開発〜設計〜初期流動管理など,市場投入までのリードタイムが大幅に短縮されてきた。
シュミュレーション技術が発達したが,設計者がものを知らないで設計していているため,思いもよらぬトラブルが発生している。設計者は図面のコピーによる端末を見ながら,モノ造りの現場と乖離してきている。
改善技術の3大管理技術である次の3つの教育がここ10年以上疎かにされたため,製造現場の改善できる腕が落ちてきている。
IE(インダストリアル・エンジニアリング)
QC(品質管理)
VE(バリューエンジニアリング:価値工学)
今回はこの中で,改善の基本の「き」である理論の上述の「3大管理技術」について述べてみたい。
1990年は,リエンジニアリングやリストラクチャリングなどが持てはやされた。「コツコツ」積み上げる改善では,激しい環境変化にはついていけないとされた。特に,1995年の1j80円を切るときには,どの企業も生き残るために大混乱をしていた。また,ちょうどISO9000sの取得ラッシュも盛んになっていった。「3大管理技術」の教育は,優先順位が下がってしまった。優先順位が下がっても,教育されるといいが,やがて忘れ去られていった。
最近,各企業も「温故知新」でこの手法教育について「不思議な新しさ」を感じ,再教育しようという流れにある。大きなインパクトとして,日本の最高益企業であるトヨタ自動車が「コツコツやる改善」を何十年もやってきたことによる揺り戻しも大きい。
さて,製造現場を改善する場合は,机の上に座っていても何も改善できない。
「現場は生き物」とよく言われる。
頭デッカチのエリートが,「あるべき論」で解決しようとしても,現場はついてこない。
ある中堅企業の事例を紹介しよう。
この企業の2代目は,有名私立の大学院を卒業し,米国留学によりMBAも取得した。キャリア官僚を経験し,この企業に入り経営幹部を数年経験した後,40歳でトップとなった。創業者は,一線を退き2代目に任せた。
この2代目は,「あるべき論」が強く,できない幹部・管理職をすぐに降格・異動をさせていた。そうなると,周りには「Yes Man」しかいなくなり,悪い情報は集まらなくなってしまった。優秀な人材が,堰を切ったように辞めていった。
そうして,4年経った。そこで,ある内容で私がコンサルティングに入った。トップは,決めたことができるはずだという固定観念があった。できないのは現場の管理職がダメだと決め付けていた。問題が発生すると,経営幹部〜管理職への体系立てた論理付けは,MBAでのケースメソッドのように理路整然としていた。しかし,同じことでトラブルがあり,経営と現場の乖離は広がっていった。
私があるとき,製造現場を拝見していると,棚の隅に10年前の改善活動のファイルがあった。それを拝見すると,さまざまなツールを使い,改善活動の的をズバリ射ていた。現在,トラブルが起こっていることが信じられないくらいの内容だった。また,今でもすぐに使える内容も多かった。しかし,残念なことはそのときの,改善のリーダや改善の主要メンバーは2/3程度定年や退職をしていた。残りのメンバーの頭と腕を使わない手はないと思った。
この企業の場合は,まずトップの頭を替えることよりスタートした。泥臭いことを「3現主義」である現場・現物・現認で改善する活動からやっていった。私は,トップに「これはどうなっているのか?」「これは,なぜこのようなことをしているのか?」と細かなことを敢えて質問した。
このトップは,プライドが高く,知らないと言わなかった。分らなければ,管理・監督者や末端の作業者に聞くようになった。そのような活動を3〜4ヶ月すると,トップも現場の実態を分るようになってきた。そこで,改善するための知識を貪欲に吸収したいと思うようになってきた。
社内の知識を持っているメンバーから聞くようになった。また,不足していることは私から適時さまざまな考え方や手法を提供していった。このトップは,頭デッカチの対応から,現場を見ることは楽しいというようになってきた。各工程の管理・監督者は,トップに負けないように改善の基本を理解して,努力する好循環ができるようになってきた。
どこの企業も製造現場の改善できる腕が落ちてきていることに,卑下することはない。当たり前のことを当たり前に泥臭くやり,手法偏重ではなく現場に発生していることに素朴な疑問を持つことである。
「なぜ,こんなことが起こっているのか?」
「なぜ,不適合品が多いのか?」
「なぜ,計画通りにものが出来ないのか?」
「なぜ,バラツキが発生するのか?」
「なぜ,仕掛品が滞留しているのか?」
その上で,動きながら知恵を出し3大管理技術を習得して戴ければ,未だあなたの企業は間に合います。これが,10年後だと,間に合いません。改善力が流出してしまい,全て一からです。10年後スタートすると,2〜5倍のインプットがかかることでしょう。
奮闘に期待します。
【2005年10月25日】
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藤本 忠司/
主任経営コンサルタント
プロフィール:
ライフワークは「改革/改善活動」の職人であり,大手及び中堅企業の製造業を中心に建設/土木・サービス業など含め,さまざまな企業の改革/改善活動を展開している。
コンサルティング手法は,「やることをしっかり決める」「決めたらやり切る」指導スタイルで,実践的な指導を行っている。
主に生産革新活動,全社コストダウン活動,全社業務改善活動,MPP(ブレークダウン・メソッド)による戦略的組織マネジメント,全社CS推進活動,負荷をかけない原価管理体制構築,営業強化活動,実行予算管理支援,小集団活動支援などを手掛けている。
主な著書に,『【新版】購買が経営を変える「プロキュアメント革新」』(同友館)など計7冊があり,2005年10月に『「決定版」モノ造りソリューション』(同友館)より出版される。 |
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